B:蜻蛉の大君主 モナーク・オーガフライ
腐敗した「古アムダプール市街」は、粘菌が広がらぬように「大封扉」で封印されている。
だが、それも完璧ではないらしくてな。化物のような大型フライが飛び出し、神勇隊が射かける弓をかわして、逃亡したそうだ。粘菌が森に広がる前に、仕留めなければ……。
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ショートショートエオルゼア冒険譚
交易都市ウルダハと森の都グリダニアを繋ぐ街道「ランバーライン」。
グリダニアにとってライフラインともいえるこの重要な街道は南部森林のほぼ中心部で根渡り沼という湿地帯を抜ける。
商隊や旅のキャリッジが沼地に足を取られずスムーズに通行できるように沼地にそそり立つテーブル岩を吊り橋でつないで渡りやすくしてあるのだが、その丁度中間地点の一番大きい岩の上にキャンプ・トランキルはある。キャンプ・トランキルは鬼哭隊と神勇隊が駐留してこの街道の安全確保と周辺にある集落クォーリーミルの防衛するのための拠点だが、もう一つ大事な任務があるという。
この根渡り沼の南西部に「大封扉」と呼ばれる巨大な扉があり、その扉の向こうには古代都市アムダプールの遺跡に通じる道ある。
アムダプールは第5星暦末期に白魔法の力で繁栄した都市国家だったが、エオルゼア全土を巻き込んだ所謂「魔大戦」の際、敵対国家に市街まで侵攻され、強大な妖異ディアボロスを召喚された。ディアボロスにより腐敗の呪いをうけ市街地は粘菌に覆われた。市街を腐敗の街にされながらも、それでもディアボロスを倒し、魔大戦を何とか持ち堪えた。だが、その後巻き起こった第6霊災の引き起こす災害には耐えきれず水没して滅亡した。
環境エーテルを利用する白魔法の国だったアムダプールが滅亡したことにより、これ以上の環境エーテルの濫用を嫌ったティノルカの森の精霊によりアムダプールの遺跡は隠蔽され、腐敗の呪いをうけた市街への道も粘菌が拡散しないよう大封扉で封印された。その扉の警備をキャンプ・トランキルに駐留する鬼哭隊と神勇隊が担っているのだ。
グリダニアのモブハン担当官は一息にここまで説明をした。物事の理解に比較的時間のかかるあたしは、話の後半に差し掛かる頃には前半の話の内容が何だったか思い出せなくなっていた。
「つまり南部森林の根渡り沼に大きな扉があって、その扉は不浄な粘菌が森を駄目にしないように防いでるってことでいい?」
あたしより飲み込みの早い相方が話を要約して担当官に確認してくれた。そういう優しいところが大好きだ。
「そういうことです」
担当官は頷いた。
「だったらそれだけ言ってくれればあたしだってわかったのに」
あたしはちょっと担当官を睨みつけて不貞腐れた。
「で、何が問題なの?」
不貞腐れたあたしはぶっきらぼうに聞いた。
「実はその根渡り沼で腐敗したアムダプールにしか生息しないはずの魔物が確認されまして…」
あたしはあからさまに嫌な顔をした。
「精霊が施したという封印自体は第七霊災の際に機能しなくなっていることは確認されているんですが、大封扉を警備する鬼哭隊員の報告では大封扉に異常はないようなんです」
「つまり、どっかに抜け道なり抜け穴なりが出来ちゃってるってことよね?」
あたしは担当官に言った。
「そうなりますね」
担当官は事務的に答えた。
「え~~~、じゃ、不浄な粘菌って言うのも漏れてるって事よね?それも塞いで来いってこと?」
「そうなりますね」
担当官は不浄な粘菌を浴びて来いと言っている事を自覚しているらしく、ちょっと後ろめたいのだろう。機械的な応対に徹っすることにしたらしい。
「受けますか?それとも辞退するんですか?」
担当官はわざと機械的に決断を迫った。
出来る事なら「不浄な粘菌」などというものには近づきたくはないが、担当官は明らかに圧力をかけてきている。言外に断ったら分かってるよね?というオーラをビシバシ出しているのをあたしの「超える力」がキャッチしている。あたしは肩を落として溜息をつきながら相方の顔を見た。
相方も同じオーラを感じたのか、苦笑いしながら肩を竦めた。